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逃げ回る賊を追いかけ回しながら、先ほど仕入れたビバの居場所を伝えた。
「すみません、賊を相手にしていたら時間を費やしてしまうと思い…」
不機嫌そうに答える姫。
「それはべつにいいのよ、ただ…」
暴れ馬を手綱で抑えようとしているコメルツに一本の矢が屋根からその命を狙っていた。
コメルツに狙い定め、放たれた。
真っ直ぐコメルツの胸に刺さるはずだった、その矢を阻止したのは、馬車の窓を突き破って出てきた黒い物体だった。
「しっかり周りを見たら?案外手一杯なのかしら」
弓を落として絶句する賊。
「なんだ…あれは……」
それは、馬車の屋根、窓ガラスをぶち破り、馬に切りかかろうとする賊、弓矢、飛び移る賊を黒い物体が素早く捕らえて放り投げる。
「化け物馬車…いや、人喰い馬車だ!」
「物なんて捨てて逃げろ!」
武器を捨て、盗んだ物を捨て、とにかく遠くえ逃げようとする賊と何度も挑む賊に分かれた。
「コメルツ…そろそろビバに会いに行こうと思ってるんだけど…、ウマを貸しなさい」
「姫様、お分かりと思いますが、この二頭、姫様では扱えないかと」
「それぐらい分かってる、だからこの二頭の性格に任せるのよ……」
屋根から飛び出している黒い物体が二頭の馬の首に巻きついた。
コメルツが抑えようとした二頭は首に巻きついた物体を振り解こうとせず、立ち止まった。
「あんた達よく聴きなさい、いっつも自分勝手に走り回ったあんた達に自由な時間をあげてあげる、その代わりにあの山に向かって走りなさい!!」
そして、姫の言うとおりにビバのいる山に向かって走り出した。
「コメルツ!あんたは村を全力で守りなさい、脱ぐのを許可します」
「分かりました」
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