1380人が本棚に入れています
本棚に追加
その為、今日から家族全員が、30分早く起きなくてはならなかった。
「今日は多分接待で遅くなると思う」
「エェッ!?」
康一の発言に、恵里佳は不満げに聞き返した。
「何で引っ越し翌日から帰るの遅いわけ!?」
恵里佳は口を尖らせながら、不満を口にした。
「しょうがないじゃん。これも仕事だからさぁ」
康一が笑いながらする言い訳に、恵里佳はますます苛立った。
「それに今夜はお義母さんが、ここを見に来るんだよ!」
「仕方ないから、えりちゃんが適当にお袋の相手してやってよ」
康一はそう言いながら、後ろから恵里佳の両肩を揉んだ。
康一は甘えたり、都合良く事を運ばせたい時には、すぐ恵里佳の肩を揉む癖がある。
恵里佳にとって、康一のそういった言動が、時折鼻につくときがあった。
そうは思っても、毎回毎回、恵里佳は自分のこの気持ちを、突き通したことは一度もなかった。
だから最近は、康一に両肩を掴まれる寸前、触れられるのが嫌で、無意識に身体をくねらせて、康一の手から逃げてしまっている時がある。
だからって、自分の旦那嫌いになった訳じゃない。
「これは貸しだからね!」
恵里佳はそう言うと、康一を一瞥した。
最初のコメントを投稿しよう!