引っ越し

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その為、今日から家族全員が、30分早く起きなくてはならなかった。 「今日は多分接待で遅くなると思う」 「エェッ!?」 康一の発言に、恵里佳は不満げに聞き返した。 「何で引っ越し翌日から帰るの遅いわけ!?」 恵里佳は口を尖らせながら、不満を口にした。 「しょうがないじゃん。これも仕事だからさぁ」 康一が笑いながらする言い訳に、恵里佳はますます苛立った。 「それに今夜はお義母さんが、ここを見に来るんだよ!」 「仕方ないから、えりちゃんが適当にお袋の相手してやってよ」 康一はそう言いながら、後ろから恵里佳の両肩を揉んだ。 康一は甘えたり、都合良く事を運ばせたい時には、すぐ恵里佳の肩を揉む癖がある。 恵里佳にとって、康一のそういった言動が、時折鼻につくときがあった。 そうは思っても、毎回毎回、恵里佳は自分のこの気持ちを、突き通したことは一度もなかった。 だから最近は、康一に両肩を掴まれる寸前、触れられるのが嫌で、無意識に身体をくねらせて、康一の手から逃げてしまっている時がある。 だからって、自分の旦那嫌いになった訳じゃない。 「これは貸しだからね!」 恵里佳はそう言うと、康一を一瞥した。
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