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「それがあったんだなぁ」
康一は鼻息荒く、得意気に言った。
「エェ?」
恵里佳は訝しげに聞き返した。
「まぁここより場所は、ちょっと不便だけどねぇ…隣町なんだ」
「はぁ!?子供達の幼稚園や学校はどうすればいいのよ?」
初めて包丁を持つ手を止めて、康一を見た。
「まぁそれはぁ、夫婦で話し合って、送り迎えを協力し合えばいいじゃん」
康一のその言葉に、恵里佳は康一をキッと睨みつけて、
「どうせ話し合ったって、いざ引っ越したら、私が送り迎えすることになるんでしょ!」
と言って、また包丁でキャベツを切り始める。
「あぁ~…ごめんね。でもえりちゃん、多少の不便は我慢してでも、引っ越したくなるような価格なんだよ~」
康一は身体をシンクに乗り出して、その物件を更にアピールする。
「中古なんだけど、築10年で4LDKで、なんと560万円なんだよ」
「560万!?」
金額を聞いて、恵里佳はビックリして、金額を復唱した。
「うん、安いだろう?」
康一は得意気に言う。
だけど、恵里佳の表情は曇った。
「いくら都心じゃないとは言っても、築10年で4LDKなのに、560万円て安過ぎじゃない??」
恵里佳の予想外のリアクションに、
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