君、怖いよ

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ほんの五秒。ヘンテコな男に見入ってしまったけど、横に居る男の事を忘れたくて、目の前のガラスケースに視線をずらす。そこには、キラキラとフルーツが沢山乗ったタルトや、春の木苺を使ったカップゼリーや、今にも揺れて、こちらに飛びだしそうになっているクリーム色のプリンアラモードが眩しく輝いていた。お洒落なスィーツに優しくバニラが香る。 目の前では、注文したアロマスティックケーキが店員さんの持つトングに挟まれて、行儀良くトレーの上から可愛い箱に詰められている所だった。 私は、その箱の中にまだ隙間があるのを確認した。折角、行列にも耐えたのだし、季節限定人気の品。と札がかかった【三種のミックスベリータルト】も2つ注文する事にした。 「あの…。三種のミックスベリータルトも2つ追加して下さい!」 右端のガラスケースのベリータルトを注文した時に横のヘンテコ帽子と目が合った。 すると、ヘンテコ帽子は私の方をずっと見つめて、ニヤニヤしていた。 私がケーキを目で追ってる間も、ずっと私を見つめて、凝視していた…と言うワケけか。 しかも、ヘンテコ帽子は私にニヤニヤと笑いかけてきて、 さらに店員さんの方をチラリと見て、こう言った。 【あのぉ。俺も三種のミックスベリータルトを2つ追加して下さい。】 ちょっと。ちょっと。ちょっと。 俺も? 俺も!? 俺もって、何よ。 私とあんたは【も】を共有する仲間じゃないわ!!す 私は、一度彼をキツイ目で睨んだ。 このヘンテコ帽子。なんだか、私の真似してる。 気持ち悪い。 私の嫌悪感とは裏腹に男は悪ぶれた様子もなく私にこう言った。 「よかったら、おごりましょうか?同じケーキだし。良かった、テラス席でご一緒に食べませんか!?」 そして、またニヤニヤ笑いかけてきた。 何物…こいつ。 自分の姿、鏡で見たことないのかな。 まず、その帽子脱げよ。 スッゴク気持ち悪い。 ナンパされたの!?
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