君可愛いよ。

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アロマスティックケーキを買ってくる。 これが今月のバツゲームだ。 俺は甘い物なんて、好きじゃないし、ましてや、女ばっかりが集うケーキ屋なんて行きたくない。 でも、俺は今、光一の支配下に在る。 借りた家賃の六万円を未だ返済出来ずにいたからだ。 返済日は昨日10月25日。 一日支払いが遅れた俺に対して光一は金銭的な利子の代わりに俺にバツを与えると言い出した。 光一のドSぶりは半端ない。 それに加えて彼なりのシュールな笑いのセンスが加わったバツゲームは毎月俺を苦しめる。 先月は母さんに電話をかけて誕生日おめでとう♪とバースデーsongを熱唱させられると言うバツゲームだった。しかも、母さんは誕生日じゃないのに。 先々月は水族館に行きイルカのショーに出る。と言うのがバツゲームだった。 しかし、あのショーに出た事は今思い出しても感動する。 ショーが中盤に差し掛かった頃に、飼育係員の女性が観客から【水にかかっても良いと言う勇敢な素人】を選出して、三頭のイルカにご褒美の餌を与えると言うミニコーナーがあり、俺は光一の指示通りに観客席から、どでかい声で、「はい!はい!」と腕を天に届く勢いで伸ばし、必死の立候補の末、見事にステージにあがった。 あの日のイルカとの距離感は興奮だった。観客席から沢山の老若男女に見守られて拍手喝采を受けて、飼育係員の女性には「イルカに餌をあげるのがとても上手ですね」とほめられた。 ありがとう。光一君。 俺ってMかな。 そんなこんなで悪戦苦闘笑いあり、感動ありのバツゲー ムがついに三回目を迎えた。 「んで?その、なんちゃらケーキは何個買えばいいの?」 俺の問いに、ニヤりとした光一は紙袋を差し出して 「まず、これに着替えてようかっ」と何をガサガサ出し始めた。
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