「はじまりのはじまりは終わりでした」

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ぼそりと呟いたあたしに、反応したのは藍子だった。 「あ、あれ六組の横田だ。なんで葵ご指名?」 「知るか。見たことも話したこともない」 そうこうしているうちに、クラスの男子があたしを指差して横田に『中瀬さん』を認識させてしまった。余計なことを、と思わず舌打ちしたくなる。 横田はまっすぐにあたしを見据えると、ずんずんとやってくるなりこう言った。 「菜々、どこ行ったか知ってるんだろ?」 「――は?」 菜々、と聞きなれない名前に反応することができず、思いのほか間抜けな声が出た。 「菜々って荒川サン?」 ここでも藍子の助け舟がはいった。顔の広い友人を持つとありがたい、などと思う間もなく数日前の藍子の話を思い出す。 「荒川って……あの行方不明疑惑の?」 「そうだよ、あんた、知ってるんじゃないのか?菜々がどこに行ったのか」
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