「はじまりのはじまりは終わりでした」

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言い訳すると、無意識だったのだ。本当に。無意識のうちに握りしめていた拳を、無意識のうちに机の上に振り下ろしたら、思いのほか大きな音が出たわけで。 それで余計に注目を浴びたことも、教室が水を打ったように静かになったことも、横田が切れ長の目を無駄に見開いて驚いていたことも、すべてあたしの責任ではない。単なる不可抗力。 あたしは大きく息を吐いて、努めて平静な声を出そうとした。 「そもそもあたしは荒川サンなんて知らん。話したこともなければ、顔すらあやふやにしかわからない。それがいきなり、おまけに初対面のあんたに問い詰められる覚えもいわれもない。知るわけないだろう、そんなもの。 あんたがあまりにも不躾で横柄だったから呆気にとられて黙り込んでただけだ。 何を勘違いして興奮してんのかは知らんが――彼女に逃げられたからってヒステリー起こして人に絡んでくるな。気色の悪い」
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