プロローグ

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※ 会談は失敗に終わったといっても過言ではなかった。 傍に控えている家臣の誰もが心中で何度目かわからないため息を吐き、それぞれの長を見つめる。 そもそも成功するはずがなかった。始める前からとうにわかりきっていたことだ。なんという時間の無駄。 両国はそれこそ途方もない年月の間、一度たりとも国交を結んだことはない。それをなんの因果か、両国がほとんど同じ時期に新王即位を迎え、その新王たちが『それほど敵対する相手を見てみたい』などとこれまた同時期に言い出したものだから、先々代から伝わる暗黙の決まりに背いてまでこの場を設けたというのに。 「……で?」 沈黙を破ったその低い声音に、ただ一人を除いた全員がはっとしてそちらを見やる。 「結局どうするんだ?俺の提示を呑めないというのなら、国交など結ぶ価値はないのだが」 憮然とした表情で言い放った男の瞳は、何の光も見えない漆黒で相手を見据えている。視線の先にいる一方はといえば、まだ幼い顔立ちをやんわりと微笑ませるだけでそれにたじろいだ様子も見せない。
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