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彼女は腕の中で身じろぎながら僕を見る。
「楓さん、僕……好きだよ」
楓と出会った季節から少し経ち、枯れ葉が落ち始めた頃。
ヤケに心臓の音と窓を打つ風の音がうるさかった。
酷く長く感じた。
もしかしたら数秒だったのかもしれない。
彼女の出した答え。
「私も、好きです」
どんな綺麗な言葉よりも、どんな飾った言葉よりも欲しかった言葉。
胸の内から何かが溶かされていく感じがした。
彼女がくれたお菓子を食べたよりも、ずっと幸せな気持ち。
きっとこれが愛の感情だ。
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