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楓の誕生日の三日前。
いつも高いヒールを履くのに、その日はパンプスを履いて来た。
「ふ、風汰……」
「ん?」
「驚かないで、ね?」
そう前置きして一枚の紙を差し出した。
開いて見ると、そこには命が楓のお腹に宿ったと言う知らせが。
「これ……」
「うん、できたの」
「僕達の?」
「うん」
「二人の?」
「うん」
「子供ができたの?」
「うんっ」
僕のありったけの力で彼女を抱きしめた。
それからハッとして、
「あっ!赤ちゃんいるんだ」
楓から飛び退いたけど、そしたら笑われた。
「まだ大丈夫だよ」
彼女のその言葉が、抱きしめてって言っているようで。
「僕、二人を守るから……守れるようになるから……」
「うん、期待してるよ。頑張ってね」
多分、この時が人生と体力の絶頂期だったのだと思う。
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