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 間に合わなかったのか。  密告されてしまったのか。  もう家族は殺されてしまったのか、それともどこかに連れて行かれたのか……。  せっかく希望を見いだしたと思ったのに。  自分はどうなるのだろう。 「尋ねるが」 「あの、家族は…」 「教える義務はない」  エゼルの手に固く握られていた紹介状は、軍服の男によって乱暴にひったくられてしまった。 「こんな時間までどこに行っていた? 法律違反だぞ」  別の男がその紹介状を受け取り、ためらいもなく封を破る。  心臓の凍りついたエゼルのこめかみを冷や汗が伝った。  そして、少しでもランドルを疑った自分を恥じた。  よく考えれば、紹介状にはランドルのフルネームが克明に記されている。  村の名前は出ていないものの、「この親子を頼む」というようなことは書いてあるのだ。  このままでは、ランドルに危害が及ぶのも時間の問題だった。  ランドルは、エゼルが無事に国境を越えると信じて紹介状を書いてくれたに違いなかった。  でないと、危険な目に遭うのはランドルの方だ。 「なるほどな」  紹介状から目を上げたナチス軍の軍服がにやりと口を歪める。  夢であってほしい。  エゼルは強く願った。  が、その頭に押しつけられる銃の固い感触は、明らかに現実のものだった。 「このランドルとやらはどこにいる?」  エゼルは、背後で銃を持つ軍服の男もにやりと笑っているような気がしてならなかった。 「おい、答えろ」  ゴリゴリ。  更に銃口を頭に密着させられる。  嫌でも金属物を意識してしまう。  だが、エゼルは何が何でも口を割らないことにした。  今の状況から推測すれば、どのみち殺られる。
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