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あの日、約束をした。
明日の朝、午前四時。あの木下で待ってる、と。
きっと、家の誰もがその時間なら寝ているだろうと思って決めた時間だった。
約束をしてからというもの、ほんのささやかな一秒一秒を長く感じて、時計の秒針が動く様子をずっとずっと眺めて過ごした。その日の夜はなかなか寝付けなかったけれど、それでもやっぱり眠気には勝てなくて、いつの間にか眠っちゃってて――――
目が覚めたら次の日になってて、いてもたってもいられなくて二時間も早く家を飛び出した。走ってあの木の下まで行ったけど、案の定そこには誰もいなかったから、木の根に腰掛けて待った。
その間、ずっとあの子のことを考えていた。
もう起きたかな。
どんな格好で来るのかな。
こんな早い時間なのだから、きっと眠そうにして来るのかな。
一体、どんなものを持ってきてくれるのかな。
「約束だよ」
そう言ったあの子の甘い声だけが、今でも耳で鳴り響いていた。
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