2018人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、オレは無属性ただ1つしか持っていない。感覚的にユニゾンスペルを使うのは不可能だろう。と思っている。
だからこそ、今まで余り考えたことのなかった二つの属性の『動き』をこの目で見ておきたい。ありがたいことに、オレの目は魔力に敏感らしく『動き』を読むのは得意だ。
「模擬戦かぁ。いいよ、やろう!」
悩む事なく、元気な返事が返ってきた。色のいい返事にオレは胸を撫で下ろす。断られるとは思っていなかったけど、杞憂だったようだ。
それからオレは、シルフィの案内で寮へと向かった。
道中、ギルドの話や共通の友達である氷室達の話や私生活の話で盛り上がり、時は早いもので気が付けば寮の前に到着していた。
外見はごく普通の高層マンション。これぞ寮!という感じの存在感を示している。春海の寮は寮と言うよりも高級ホテルみたいだったから庶民の隼斗としてはこちらの方が親近感がもてる。また、この寮には管理人がいない。定期的に業者が来て清掃等を行っている。
事前に寮の部屋の鍵は貰っている。最上階の3号室だ。階数としては35階。ベランダからみる夜景はさぞかし綺麗だろう。
「シルフィ、今日のお礼……と言っちゃアレだけど。お茶くらい出すよ。多分荷物とか届いてるし、いい茶葉もあるんだ」
「じゃあ……お言葉に甘えて頂こうかな?隼斗君はお茶が好きなんだね」
いや、オレじゃなくてリリスがな……とは言わずに、笑みを返しておく。あいつが毎朝朝食をせびりに来て、ふてぶてしい事にお茶に文句を付け高い茶葉を買わせたなんていう経緯がある。
茶葉は順調に減っていったが、それでもまだ3割近く余っているので、お礼も兼ねていい機会だ。
用意されている転移魔法陣を使い35階へと移動し、3号室の鍵を開けて部屋の中へと入った。
「うっわ、広ぉ……」
目測で30畳はあるワンルームが目に飛び込んできた。ベッド、机、ソファーなどの家具一式が揃えられており、キッチンに至ってはアイランドキッチンだ。誰得だよ。
そして目を引くのは、一部ガラス張りされた壁である。そこから、暗くなって灯りがともり始めたリューベルンの街並みを一望する事が出来る。
ご丁寧な事に、その景色が見渡せる所に3人掛けの白いソファーと小さな机が置かれている。匠の粋な計らいが感じられた。
最初のコメントを投稿しよう!