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その日、僕は普段と変わらずに仕事を終わらせて、無事に帰るつもりだった。
なのに何故か、予想外の出来事に出会ってしまった。
いや正確には、予感はしていたのかもしれない。
けれど無意識に、それを否定しようとしていただけなのかもしれない。
――こんな場所で、逢いたくはなかった。
僕が初めて“その他大勢”ではないと思えた人物。
『――昴琉君。』
(もう流石に、笑いかけてはくれませんか…)
胸の中でこんな事を思いながら、微笑みを作る。
この仕事を続けていく過程で、いつしか本心を見透かされないように、仮面を被るようになったのかもしれない。
そんな笑顔も、貴方には“不敵”と見えたのでしょうか…。
精一杯に自分の気持ちを隠していた。
自分の気持ちが、よく分からなくなっていた。
『憎んでいるわけじゃない。もちろん、愛してもいない――』はずの貴方を、僕は本当はどう思っていたのか。
どうやら僕は、その答えに、すでに気づいていたらしい。
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