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「先生、どうですか」
「残念ですがガンです。末期なので今日から入院してもらいます」
普通であれば絶望したかもしれない。
だが、田中はそんなに慌てもしなかった。
人生設計では80歳に死ぬことを選んだので治るはずだと思ったのだ。
入院初日、すぐに面会したいといってくる人がいた。
「失礼します」
その人物の顔は紛れもないあの男だった。
「あ、あなたは.......」
「お久しぶりです」
「ガンだと宣告されたのですが、まぁ治りますよね?」
田中は少し不安な気持ちで聞くと、男は言った。
「治りません」
「えっ?」
「あなたはこれからの30年間抗がん剤の死ぬほど苦しい副作用に耐えなければいけませんよ」
「そんな......じゃあ自殺するしか」
「自殺もできません。しようとしてもできないでしょう」
「そんな......何か方法はないんですか?」
すると、男は決まり文句のように言った。
「すいません、変更はお断りしております」
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