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ベンチで腹を休めていると、どうしても暇になってくる。
「かといってすることがない。っつーかできない!今走ったら30mくらいで静かに崩れ落ちそうだ。…しょーがない、車でも呼ぶか?」
黎奈に振り回されてすっかり忘れていたがまだテストの期間内である。つまらないことで時間を浪費している暇は全くない。
(…ぶっちゃけ俺にとっては勉強が『つまらないこと』だけど)
携帯電話を取りだし家に連絡をつける。
露川家。世界富豪ランクでぶっちぎりの一位を、ランク付けが始まった当初から保守し続けている一族である。その総資産は全世界の人間が等しく豪遊しても、一世紀は遊び続けられるだろうと言われる。
露川家の住宅(もはや宮殿級の広さだが)も国を五つ使い潰すほどの金を使ったのであろうと噂されている。慧哉でさえまだ全ての部屋を見たことがない程である。
当然そのような規模になると執事やメイドも莫大な数になっている。これもまた慧哉は数えてみたことはないが大量にはいると聞いたことがある。
何人いるかは分からないが、顔と名前は全員記憶している。
(まー家族なんだから当たり前だろ)
ふとそんなことを思いつつ、脱力していると軽いクラクションが聞こえた。
右を見るとリムジンが道路の端に寄って駐車している。
「弥高も一緒に連れて帰ったほうがいいかなぁ…」
運転手が手を振っている。慧哉はそれを確認するとその重い腰をあげ、車に向かって歩き出した。
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