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親父の報告はどうでもいい。どうせまた訳の分からないことを誰にも知られず成し遂げるのだろう。と慧哉は適当に予想を立てる。
「んで気付いたらあの大企業だと。すげーなー」
「…貴方はその次期社長の最有力候補ですがね」
キョーミない、と吐き捨てる。誰がなろうとあそこまで巨大化してしまったらあまり差はないだろう。
(まぁ将来の夢も決まってないしな。レールが決まってるのならそれに従ってみるのも面白いかもな。でもなー俺のやりたいことって……?)
ふと、周りの異常を目の端で捉えて思考が中断される。今自分は車に乗っている。なのに、風景が流れていない。もちろん信号に引っ掛かったのかも知れない。が、そんなことで思考は中断されない。問題なのは、車があり得ない挙動で停止をしたということである。
具体的にいうならば、時間が止まったかのように一瞬で速度が0になったのだ。
その不気味すぎる挙動が慧哉の思考を中断したのだ。
「……なんだ!?『序列』狙いの『決闘』か!?ごんぞー!」
「ハァ……いいえ、違います慧哉様」
慌てた慧哉だが、渋谷はそれとは対照的に自分の白髪のオールバックをゆっくりと撫でる。脱力したように、
「…弥高様ですよ」
「…………………あぁ」
慧哉が一気に白けると同時に後部座席のドアが開いた。
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