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フルネームを聞いて慧哉の頭の中から必要な記憶が浮かび上がる。
「あーっ!はいはい!なんか一週間前くらいから言ってたね。『…やべぇ。変な女に目ぇつけられた』とかなんとか。あれか~」
ひとしきり納得してから、『で?』と先を促す。
「さっき帰ってたんだよ。『なに勉強しようかな』って。そしたらいきなりノコギリが…」
満腹の慧哉を刺激しないよう、車は静かに進んでいく。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
二人は寮にいた。
もともと二人の学校は別々である。しかしどういうわけか上がある日、『他の学校と交流して仲良くしようゼ!』という決定を下し、複数の学校の生徒が仲良く一つの寮に収まることになったわけだが、
「はい!で、どういうことか説明なさいこの泥棒猫」
煎れてきた紅茶を小さなテーブルに乱雑に置きながら、黎奈は里璃を問いただす。
「え、えぇ~。泥棒じゃないですよぉ。私が狙ってるのは貴女の想い人、の弟さんですぅ」
うむ、と一応頷きながら、黎奈は彼女の発言を頭の中で反芻させる。
「うん。うん。まぁず始めに訂正を。私はアイツがす、すすす好きなわけではない。き、気になるだけである。オーケー?」
「……オーケー。多少気になる点はありますがぁ、その事実だけで十分ですぅ。お互いに狙っている獲物は別々で、しかもこっちもあっちも非常に近い位置にいる」
これらの条件から導かれる結論はひとつ。
「同盟、というか、『協定』を立てませんかぁ?」
「乗った」
返事は即座に返り、二人は手を組んだ。
「「あの難攻不落要塞陥落してやらぁ!!」」
二人の決意は天より高い。
…それが届くかは別にして。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「………んで、なんか脱力しまくりだったから適当なトコに置いといて、帰ってきた」
「…お前それ男としてどーかと、思うよ?」
慧哉は若干引きぎみに答える。
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