新と旧の佇まい

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里璃が脱力したのは結局なんだったのだろう、と二人の会話は流れていく。 「やっぱ戦って疲れたんじゃねーの?」 「いや、それはねぇよ兄貴。あっちが繰り出してきたのは二発だけだ。確かに人外の出力で距離を詰めてきたけど、あれは機械で補助してた。そもそもアイツは紛いなりにも『序列』所持者だ。『戦闘』はある程度慣れているはず。ならば立ち回り方もそれに相応するだろ。疲れは見えなかった」 「…じゃあ、あまりの弥高の強さに恐れをなした、とか」 弥高は腕をくみ、眉を寄せる。 「それは一番ないだろう。これは戦った者の正直な感想なんだが、里璃は『闘い』を楽しんでる風に感じた。恐怖がなかった。あぁいう人間はもし『本当の』恐怖を感じたとしても、それを本能で処理しきれずに闘いに挑む。怯みはしないさ」 ほぅ、と慧哉は弥高の意見に興味を持つ。無論、――このことを本人に言ったら物理的に吹っ飛ばされそうだが、――頭が弱い弥高がこのような高度な意見を持つことが驚きだ。 しかし、それよりも彼がどこでそのような経験を得たか、ということの方が問題だ。 あのような経験を語れる、ということは、以前どこかで絶対的な恐怖を体験し、それに臆することなく『戦闘』を申し込み、完膚なきまでに叩きのめされたということであろう。 彼は身体系最強と言われる『天賦才覚』に属する。つまりは単純な身体能力で勝負する部類なわけだが、弥高はそれの頂点に君臨している。他の分類としては頭脳と技能があるが、その頂点はそれぞれ露川慧哉と石索将延が座している。一応その二人は弥高より『序列』は高いが、直接的な恐怖は与えられない。 残る手としては、第六位の弥高より上位で、第二位の慧哉と第五位の将延を除いた、第一、三、四位だが。 (第三位くらいか。第四位は元々かなり温厚だしなぁ…) ずっと自分の考えを垂れ流している弥高を見つめる。 ……そんな怪我したことはあっただろうか? 「弥高。…おい、弥高!」 「でね、オレは思うのよ。里璃もまだまだ若い………うん?はい?」 「そんなに話せるってことは前に誰かにボコボコにされたってことだよな?」 「そぉだな」 弥高は素直に肯定する。
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