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「誰に?」
弥高を『完膚なきまでに』叩きのめすなどそこらにいる輩にできる芸当ではない。出来るとしたら弥高より『序列』が上位の能力者達だが、第五位は技能の頂点、第四位は温厚な方だし、第二位は頭脳の頂点であり、正直身体流の頂点である弥高を『叩きのめす』というのは簡単にはいかない。
慧哉は問いのあとに言葉を続ける。
「お前より上位のヤツでもお前を片手間でボコボコにできるのは第三位と第一位くらいだ。でも…そうだとしたらおかしい」
第三位は狂暴なことで知られる。立ち向かったとしたら『序列』が下の者なら一片の肉片も残らないことだろう。勝つも負けるも五体満足では済まないはずだ。ならば…
「第……一位……?」
思わず、声が震える。
消去法の結果、一番あり得ない答えを『序列』の最高頭脳が導いていた。
「ま、さか…第一位と『戦闘』したのか…?」
対する弥高の言葉は素っ気なかった。
「ああ。第一位と闘ってボコボコにされたことが以前にある」
それは、実に恐ろしい言葉だった。弥高の態度も見た目は軽いが、目だけは嫌悪感を隠そうともしていない。
第一位。それは相和町の中で最強の存在であるということだ。しかし、誰もその姿を見たことがないという。
否。見れないのだ、と途方もない数の被害者達は皆口を揃える。『発見したはずなのに、そこから負けるまでの一切の姿が思い出せない』、と。
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