新と旧の佇まい

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これは一説には、子供時代は、まだ特殊な能力を発動させるための脳の活動領域が空いてあるが、ヒトが成熟するにつれ余裕が無くなっていき、発動することが困難になるのだろうと考えられている。25歳を迎える頃には殆ど全ての人間が能力を失う。強度がいくらであっても。 そして、強大な力を手に入れた人間というものは暴走しがちである。それは大人だろうと子供だろうと関係ない。事実、地獄のような世代も何回かあったのだという。 「その時は『序列』たちが町を闊歩し、理不尽な暴力をふるっていました。その逆、ヒーローやヒロインのような『序列』がいたことも確かです。相和町は『天賦才覚』…まぁ、超能力ですか、その集大成であるという特殊な町ですが、『序列』達によってその歴史は描かれてきた、と言っても過言はないでしょう」 弥高は静かに耳を傾ける。そして思う。この人は今まで何を見てきたのだろう。なにを感じて生きてきたのだろう。渋谷のセリフには実際に『体験した』重みが感じられるのだが。 今、この男の中に浮かんでいる『序列』は、正義なのか、悪なのか。 「つまり、『序列』達がこの相和町の中心なのです。それが畏怖なり、羨望なり、崇拝なり。それは過去のことからも、確立した事実だということが弥高様もお分かりになるはずです」 「…だからこそ、今代は不自然だ、と?」 ええ、と渋谷は頷く。 「まさしく、不自然です。『序列』の中でも第一位という位置は絶対的で揺らぎようのないものでした。しかし、今回は第一位が不在ということと状況が同義です。…以前も確かにそのような『序列』はおりました。適任者がいないという理由で。そしてその『序列』はお互いの個性がぶつかり合い、最終的には内部崩壊していきました」
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