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「は?」
いきなり生じた目の前の超常現象に、目が点になる弥高。渋谷はそんなことはお構い無しに突如現れた空間の中へと歩みを進めていく。
「ち…っ!ちょっと!ちょっと待てごんぞー!!なにこれ。ナニコレ!?」
「あれ?弥高様はご存じなかったのですか?」
なかったのですか、って…と弥高は絶句する。とりあえず開いてあるドアを閉めてみる。すると、ドアは周りの壁とピッタリはまってしまった。近くで見ても壁とドアの境界線が全く分からない。
「え?え?ナニコレ?なんで壁にドアがあるんだ?なんでこんなもんがあるんだ?」
頭のなかに疑問符しか浮かんでこない状態に軽い目眩を覚える。なんで数学にも頭を痛めているのにこれ以上刺激されなければいけないのか。このヤロウは専属執事のクセに子息を殺す気か。
「…どうやら本当になにもご存じないようですね。はあ、御主人様らしいと言えばらしいですが…」
「えー」
弥高は不満半分納得半分の声を漏らす。
「確かに親父ならこういうのは秘密にしてそうだけど。で?」
「詳しい説明は中でさせていただきます。どうぞ、まずは中へ」
渋谷が改めて開いた部屋へ弥高は少々気味悪がりながらも入室する。入った瞬間ドアが閉まる。これであの廊下には少し不自然な壁だけが残るだろう。つまり、人の痕跡がなくなるわけだ。
しかし、今の弥高にはそこまで考えは至らなかった。目の前の光景がそれほどまでに圧倒的だったからだ。
「な、んだ…、ここ…」
「見ての通りでございます」
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