新と旧の佇まい

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そこには、贅沢な家具があるわけではなかった。 そこには、陰惨な拷問部屋が設置されているわけではなかった。 ただ、単純に。三次元的に白の空間が存在していた。どこを見ても全てが白いため距離感が全くつかめない。しかし、だからこそ一つ言えることがある。 「この部屋…どう見たって家よりも規模がでかくないか?」 奥行きは元々我が家自体の大きさが莫大なため分からない、が少なくとも高さだけは、家よりも大きい気が…する。 「この部屋は簡易的な四次元空間となっておりますので。元々の家の規模など問題にはなりませんよ」 渋谷が気楽に返した言葉に弥高の眉がピクンと動く。 「『四次元空間となっておりますので』?そりゃまるで『戦闘場』のことじゃねぇか」 ほんの数時間前に里漓と闘ったことを思い出す。あの時は強制的に『戦闘場』に移動させられた気がする。 「ええ。あれはこの部屋をモデルに、人間の五感に上手いこと干渉するように作り上げたものなのですよ」 「へぇ。こっちのほうが先代か…。…じゃあこれを開発したのって誰だよ…」 渋谷は目の前の空間に軽く手をかざす。すると、三次元的な薄いモニタが渋谷の手の先に出現した。それを何回かタッチすると、二人の前にテーブルが床からせり上がってきた。それに少し遅れる形で、椅子が二つとワゴンのようなものも床から出現する。 「えー」 先程と同じような不満半分納得半分の声を漏らす弥高に渋谷は苦笑いで返す。
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