新と旧の佇まい

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「そのようなお顔をなさらないでください。先ずはゆっくりと休憩でも、と思いまして」 「いやだって…こぉいうトコにこういうモノは似合わねぇじゃん。スペース的に」 「設定を変更すれば部屋の広さも変えられるのですが…なにぶんそれをするには最短でも十分くらい掛かりますので。それを待つのは退屈でございましょう」 それは、まぁ…、と弥高は考え直しながら渋谷に案内されて席に座る。 テーブルに置かれたビスケットを一つ摘まみ、それを口に入れる。バターの風味が口に広がる。 「おぉ。旨いなコレ。誰が作ったんだ?」 「メイドの誰かだとは思いますが。後で調べておきます」 そう言うと渋谷は慣れた手つきでお茶を淹れ始めた。香りから察するにチェリーの紅茶だろう。弥高のティーカップに紅茶を淹れると彼は反対側の席を手で示しながら、『失礼してもよろしいですか』と尋ねた。 渋谷の着席後、弥高はお茶を一口飲んだ。やはり渋谷が淹れるお茶は違う。慧哉は緑茶派らしいが、自分は断然紅茶派だ。香りも楽しめるなんて一石二鳥だ。もっと言えばコーヒーが最上だが。 弥高は紅茶で心を落ち着かせた後、口火を切った。 「よし、ごんぞー。なんでオレをこんな部屋に招いたのか説明してもらおうか」 渋谷はなぜか重々しく頷き、理由を話し始めた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「(時は少し前にさかのぼる。露川家の御曹司である露川慧哉(17♂)は『料理を見てくれ』という不条理な母の発言の下、只今床に引きずられている最中なのだった。こうなった慧哉の母は止まることはない。趣味に没頭してしまった人間に、周りを一々確認する余裕というものが存在する意味はない。果たして慧哉はどうなるのだろうか。またなんだかんだあって最終的には露川家の生ゴミ置き場にそれよりも汚い状態で放り投げられるのだろうか?今後の展開に乞うご期待!!)」 「……?慧哉ちゃん、なにさっきからぶつぶつ呟いてるの?怖いよお母さん」
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