新と旧の佇まい

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うふうふうふふ、と非常に危ない笑みを浮かべる慧哉。ちなみに襟首を掴んでひきずられていっているため、引っ張っている寧架本人は慧哉の笑みに気づいてはいない。 「いや~また新しい料理が出来ちゃってさぁ~。慧哉ちゃん料理得意でしょ?お願いできるかな、って、」 「……俺は別に得意じゃないし、作ったとしても見た目で三日は物が食べられなくなるようなグロテスクな料理なんだけど…」 「でも味はモノホンでしょ~?見た目悪くても美味しかったらそれでいいのよ!」 「えー。スパイスが最高でも青色のカレーは誰でも食べたくはないんだけど…っつかそろそろ離して」 「それは食のイメージだからでしょ~?慧哉ちゃんはそもそも造形の時点でアウトじゃない」 寧架の牽引が止まったので立ち上がると、そこは台所だった。この家には三桁台の人数の料理が作れる厨房があるがそれとは別に、普通の家庭と同規模の台所がある。ここで寧架はよく趣味の料理を作っているのだ。 『料理の毒味をしてほしい』なんて言うから部屋中に障気でも渦巻いているのかと思ったらそうでもない。至って日光がよく似合いそうな白い台所だ。 (ま、俺が使ったら地獄絵図になるんだけど。…美味しいのに) そう思った慧哉の前に、底の浅い皿が一つ置かれる。
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