新と旧の佇まい

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納得できない者。 自分よりしたの奴等と同列視されることに異常に嫌悪感を示す。自分の立場をハッキリとさせておきたい。納得できなかった理由は様々だろう。確かなのは、その特別措置はその時せっかく安定していた状態を崩しかねない、とその者が気づいたということだ。 「最初は反対していました。しかし反対していた者はその一人のみだったので、まもなくその特別措置は実行されようとしました。そして、ある一人の『至高の十傑』は一人で静かに決断をしました」 その者は考えた。今の『序列』は全員一応埋まってはいるので安定している。だが、それを『第一位』という型に全部収めてしまって、他の能力者を『序列』に当てはめたらどうなるか。…組織が肥大しすぎてしまう。抑止力が効かなくなる。 なら、どうするか。抑止力が使われないような関係にするしかない。もっとスッキリしたシンプルな構図に戻せばいい。 つまりは。 自分が、『至高の十傑』全員を殺害して、頂点に立てば良い。 それはどんなに苦渋の選択だったであろう。個人より、『序列』であるが故の全体の優先。そのためには自らの手で同胞を抹殺する必要があったのだ。 「もともと、彼女は『十傑』のリーダーのようなもので、一応トップという肩書きを所持していました。その能力も確かに、『十傑』全員より秀でていました」 だからこその、責任感。 だからこその、裏切り。 「それは明け方に伝えられました。アイツが暴れてる。俺達全員を殺す気だ。助けてくれ―――。…ギリギリの連絡でした。私の友は最後の力で、私に危機を知らせてくれたのです」 「待て」 弥高は思わず話を遮る。混乱しかけた頭を必死に押し留める。 聞くに耐えない話だったわけではない。弥高はそれくらいの地獄なら既に見ている。 言葉が引っ掛かった。昔話にはありきたりな言葉だった。が、決して無視できない、無視してはならない言葉だった。 「ごんぞー。その言い方はおかしい。だって。それだったら…」 自分の中で考えがまとまっていく内、弥高にはいきなり目の前の執事が大きくなったように感じた。何故だ。何故なのか自分でも分からない。しかし感じたそれは、 「……はい」 自然界の弱者が、圧倒的強者に与えられる、莫大な感覚。 「私は……『劣悪な十傑』の生き残りです」 則ち、恐怖だった。
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