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「おおぉぉおあぁっ!!」
雄叫びと共に弥高は前方へ疾走する。
なぜこのような展開になったのかはよく分からないが、『劣悪な十傑』の実力もみてはおきたい。し、前々から是非闘ってみたいと思っていた。
(ごちゃごちゃ考えるのは慧哉に任せてりゃあいい!オレは闘いを楽しむだけだ!!)
「はあぁああぁぁ!!」
弥高の場合、単純に力が強すぎるため自身でも余程集中しないと制御が難しい。全速力で走ってからのパンチなど目標の寸前で止めたとしても、ソニックブームなどで結局は少なからずもダメージを与えてしまう。
つまり。相手がいくら『劣悪な十傑』であろうと『触れれば勝ち』という状況を作り出せるのだ。
音速に近い速度で渋谷に急接近する弥高。しかし、それが渋谷の肌に触れる直前。「おやおや」と身動き一つしなかった渋谷は、一言だけ呟いた。
「拳をお止めください」
その瞬間、時間という概念を切り取ったように、弥高の動きが唐突に止まった。
「な………っ!?」
弥高の表情が驚愕に染まる。力を入れても全く、外からコンクリートで固められたのかと思うほど、指先も動かせない。
唯一なんとか動かせる口で言葉を紡ぐ。
「な、にを…………」
「はは、教えると思いますか?…さて、まぁお伏せください」
バゴン!という音と共に弥高の体が床に沈む。これも接着剤で貼り付けられたかのように全く体が動かせない。
「がっ……!!!」
「さぁ。始めましょうか、弥高様」
弥高の動きを完全に無視して、執事はゆっくりと礼をする。
「かつての『最凶』を、ご覧にいれましょう。くれぐれもお亡くなりにならないよう、お気をつけください」
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