恐怖の余波

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「…残念ですが、間違いでございますよ」 ニヤリとした笑みに、ニコリと笑みを返す渋谷は軽く肩をすくめる。 「近くはありますがね。大体それでは先ほど披露したような技は出来ないでしょう?……やはり弥高様ではまだ少々知識が足りませんか」 「……………」 相変わらずの挑発の言葉も耳に刺さるが、もはや冷静さを失うことはない。 考え自体はスタート地点に戻ったが、考えるための手札は増えた。 すなわち、『フェロモンに近い方式でさっきのような技を繰り出した』ということ。 さらに。 「どうしました?攻撃しなければこちらからいきますが?できないのですか弥高様?」 挑発にも余念がない…と言ったら変だろうか。とにかく、戦闘が開始してから渋谷はずっと弥高に対して挑発をしている。 なにかある。 (もう一度くらいお試しで…殴ってみますか) 足の裏に力を込める。最初渋谷に無理矢理伏せらされた時から、ずっと体が下へ下へ動こうとしている。これも弥高にとってはかなりの圧力とはなるが、これで我が『天賦才覚』を封じていると渋谷が思っているのなら、それこそ鼻で笑うくらいの余裕ならまだ残っている。 二人の差は約50メートル。環境が環境だからかそれだけ離れていても二人はお互いの声がよく聞こえる。 軽く話しかける。 「もう一発殴ってみようと思う」 渋谷も構えさえ取らずに微笑む。 「どうぞ。叩きのめして差し上げます」
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