恐怖の余波

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ッッドン!! と爆音が轟く。弥高が強く地面を蹴った音だ。一度加速し始めれば、彼の体は一秒も待たずに音速並みの最高速度を叩き出す。 (この加速は早い分カーブとか変則的な動きは出来ねぇ!!だから今のオレにとれる戦法は一つだけ!!) 体の後ろにソニックブームが生じるよりも早く、弥高は標的の鼻先へと突進する。 (ごんぞーが反応するよりも早く!能力を発動させるよりも早く!!一発で仕留める!!!) 利き手である左の五本の指を力強く握る。音速の速度を出している体から、音速並みの速度で、『惑星掴み』と例えられる破壊力を放てばどうなるか。渋谷も怪物だ。死ぬことはないだろうが、しかし意識を飛ばすことなら可能だろう。 「吹っ飛べぇぇえぇえぇえええ!!」 弾丸よりも速く、核爆弾よりも破壊力のある拳が渋谷の腹を狙う。 ドギュルッッ!!という耳を塞ぎたくなるような音と共に、まさに悪魔の一撃が『劣悪な十傑』に向かう。そして、音の壁を越えた拳が届く直前で。 時が止まったように。 渋谷の口から言葉が紡ぎ出される。 「真後ろへ、吹き飛べ」 その瞬間。露川弥高は完全に勝利を確信していた。今自分が放てる最高の技を繰り出したのだ。これで潰されなければおかしい。勝てなければ、おかしい。 なのに、攻撃が渋谷へ届く前に。 弥高の体は後ろに、無理矢理に吹っ飛ぶ。 もちろん、それまでの挙動を完全に無視して。
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