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体が一瞬で制止する。次の瞬間には、後ろへ向かって進んでいた時の速度と全く同じ速度で体が飛び始める。
当然弥高はそれまでは前へ前へと運動を行っていた。それが急に、後ろ向きへと力のベクトルを真反対にされると人間の体内はどうなるか。
「ごっ、ぶ…うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!??」
地面を転がりながら弥高は絶叫する。まるでプレス機にかけられた後、大きい鉄板で体を思い切り後方へ叩き投げられたような感覚。通常の人間ならミンチになっていたことだろう。
しかし。それは逆に。
(…ッ!ギリギリまで引き寄せてからカウンターを喰らわせやがったか…ぐっ…)
あそこまで馬鹿げた速度を出していなければ、このようなダメージを受けることはなかったこともまた事実。今更だが、己の失策さに唇を噛む。
とにかく真後ろへ飛び続けているわけにはいかない。衝撃を受け流しながら着地しようとした弥高だが、
「………くっ!!……………ッ!」
いつまでたっても失速しない。後ろ向きの力が継続している。そして後ろに壁はない。どこまでも白い地平線が延びているのみだ。否、本当は見えないだけなのだろうが、そうだとしても吹き飛び続けるのは得策ではないだろう。
このままでは。二人の距離は何キロも引き離されてしまう。そうなるとこの『戦闘』は強制終了だ。『距離をある程度自発的に取る』という動作をし過ぎると、『逃走』と見なされ『敗北』とされてしまう。
「それだけはぁ………死んでもゴメンだごらぁあぁあぁああッッ!!」
咆哮と共に弥高は拳を地面に向かって降り下ろす。
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