恐怖の余波

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自らの不利も気にせず、弥高は不敵に笑う。直球で質問を投げ掛ける。 「……限界かよ?」 渋谷もその言葉から読み取ったのだろう。隠さずに大きく息をし始める。ネクタイを少し緩め、首を一回だけゆっくりと回す。 「私の『天賦才覚』は少々高度な技術を必要としますので、その分体力の減りも激しいのですよ…肉体が活動するための脳内の演算領域さえ確保できないほどですし」 そう言えば、ド派手に見えるような攻撃を受け続けていたので気付かなかったが、渋谷は戦闘が始まってから少しの身動ぎさえしていない。 弥高は下へめり込んだり、後ろへ吹っ飛んだり、床へ拳を降り下ろしたりしていたので、結果的に渋谷の動きはさらにカムフラージュされたのだろう。あるいは、それも渋谷の計算のうちなのか。 なぜなら、弥高をこのような目に遭わせたのは渋谷自身なのだから。 「まったく……昔は五回ほど使えたんですがねぇ…今は三回が限度ですよ。年は取りたくないもんですねぇ」 「…だったら使える命令文はあと一回だけか。…それを使ったらごんぞーはどうなる」 「別にどうもなりませんが。強いていうなら、気絶するくらいです」 「十分重症じゃねぇか……」 自然にため息が出る。…そこまで戦闘する理由はないのではないだろうか。あくまで――渋谷が言うには――これは『特訓』、命までかける理由はないはず。そこまで渋谷が燃えている理由が弥高には想像できない。 訝しげな表情をする弥高からなにかを読み取ったのだろう。脂汗を額に浮かべながらも渋谷はニッコリ笑って首を横に振る。
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