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「まどか………」
「深爪、何回もしたのに言えなくて…
前髪を切りすぎて気分が落ちたときも何も言えなくて…
ただ“淋しい”とさえ言えなくて…
こんなんじゃ、気持ちが離れちゃうって思っても何も出来なかった…」
「……今、聞かせてくれないか…?」
「えっ…」
「この半年、何があって、何を感じていたのかを…
今、聞かせてくれないか?」
「和馬さん…」
「まどか…頼む。」
今にも泣き出しそうな私は、同じく泣き出しそうな和馬さんを見て
ゆっくりと息をすった。
「右手の中指が、深爪して…すごく痛かった。」
「…うん。」
「前髪を切ったんだけど、切りすぎて陽奈に爆笑されて…」
「俺は、可愛いと思うけど?」
「どっかの誰かは、私を忘れちゃったみたいに連絡くれないし…」
「…本当にごめん。」
和馬さんは、一歩、また一歩と私に向かって歩み寄る。
「それから…
極めつけは、沙耶さんに和馬さんが帰国するって聞かせれて、私は何も知らなかった…」
「…成功させたかったんだ。」
「えっ?」
「まどかの驚く顔が見たかった。
これは、本心だ。嘘や偽りはない。」
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