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駅員の放送と共に電車が止まった。私は花穂の肩を揺らして彼女を起す。
「ほら、電車来たぞ」
「うーん?」かなり寝ぼけているみたいでまだ目をこすっていた。急いで腕を引っ張って電車に乗った。すぐに扉は閉まったがなんとか間に合った。
電車に揺られながら家まで帰る。外の変わっていく景色を眺めながら私たちは他愛もない話で盛り上がる。この時間が何よりも好きだった。あと一年が経ったらこの時間は失ってしまう。キミの側にあとどれくらい一緒にいられるのだろうか?残されたわずかな時間を私は一つ一つ大切にしていこう。
三十分して電車は家の近くの駅に着いた。ここから二人で歩いてかえる。
「すっかり夜だね」となぜか花穂はうきうきしながらそう言った。
「そうだね」今夜は満月でとても月が綺麗だった。
家の前に着き、花穂と別れることに。
「最近は大丈夫?」私は心配になり訊ねた。元気よく花穂はうなずいた。
「ああ、帰ってきてないからな。単身赴任で。ちょっとないは大丈夫かな」ほっと私は息をついた。
「何かあったらうちの家に来ていいから。お母さんも歓迎しているから」私がそういうとうれしそうに花穂は微笑んだ。
「「また明日」」お互いに手を振って別れる。今夜はいい夢が見られそうだ。
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