最後の一年間

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 駅のホームで二人で電車を待つ。これももうすぐ終わりかぁ。うたたねをし始めたみたいで私の肩に花穂は寄りかかってきた。花穂の寝顔を見て思わずどきっとしてしまった。私はすぐに目線を逸らして空を見上げた。 『キミのことが好きなんだ』そういえたらどれだけ楽なのだろうか。私はすやすや眠っている花穂の寝顔を見ながら小学生の頃を思い出した。  あれはまだ小学生低学年だったっけ?あのときお互いに冗談半分で結婚したいなって言っていたっけ?無邪気なあの頃に帰りたいとつくづく今になって思い返す。 「絶対に結婚しようね」 「うん、約束だよ」小さい頃だから許されたこと。今では許されることではない。私は一人で鼻で笑った。  ”同性愛”は許されない。私はおかしいんだ。だけど、異性を好きになるのと同じ気持ちなんだ。キミの声を聞くと、においをかぐとどきっとしてしまって、隣にいたいと思ってしまう。ずっと側にいたいって思うのは間違いなの?自分を責めて苦しくなる。だけど、キミの側にいると自然と何も考えなくてもいい。すごく楽になれるんだ。これは私のわがまま。だから、この思いを胸にしまって生きていくんだ。それが私の”償い”なんだ。
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