最後の一年間

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 学校の近くまで来て、ふと上を見上げた。この坂道にずらっと並んでいる桜の木。ピンクのかわいらしい花を咲かして道にはピンクのじゅうたんができていた。とても綺麗な光景なのにどこか切なくて。ひらひらと舞い落ちる桜の花びらを見て、しんみりしてしまった。 花穂を見るとなんともいえない寂しそうな顔をした。その気持ちは痛いほど分かっていた。私たちの進路はここで分かれることになっている。高校卒業後は私は就職に、花穂は夢をかなえるために専門学校に行く。きっとまた逢えるはずなのに、でも切なかった。ふと不安になり花穂に訊ねてしまった。 「卒業したら、お互いのこと忘れてしまうのかな?」普段はそんな弱音を吐かないが、桜を見ているとどうしてか切なくなってしまって我慢できなかった。いつもなら笑顔でありえないと返してくれる花穂なのに、やけに静かだった。 「大丈夫、俺は一生友達だと思っているから。忘れるか」寂しそうな顔でそういう花穂を見て私はつい笑ってしまった。ぽかんと口を開けてみている花穂をよそに私は爆笑していた。 「そうだね、二人で馬鹿なことばっかしてきたんだから。それに、最後の一年くらいはいい思い出を残さないと」 「そうだな」私たちはお互いに笑って学校の校門をくぐった。
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