最後の一年間

9/20
112人が本棚に入れています
本棚に追加
/229ページ
 「書けた」とご機嫌な花穂。そういえば用紙取られていた。何かを付け足したみたいで唯ちゃんと春ちゃんに花穂は急いで見せに行く。二人は私の用紙を見て、笑い始めた。当の本人の私の頭の上には小さくはてなが浮かんでいた。 「じゃ、後ろから集めろ」といわれ、ようやく見せてもらった。得意なことに堂々とつっこみと書かれていた。  夕方になり、帰る時間になった。私は一番薄い本を取り出して思いっきり叩いた。振り返った花穂は涙目になっていた。痛かったかも。おそるおそる私は訊ねてみた。 「もしかして痛かった?」 「そんなことない」と真っ暗な笑みを浮かべる花穂。私の頬にはうっすらと一筋の汗が流れた。身の危険を感じた次の瞬間...。 花穂ちゃんは回し蹴りを私に決めた。あまりの強さにそのまましゃがんでしまった。遅かったか。唯ちゃんと春ちゃんはもう帰っていたみたいだ。だからか! 「お前、二人がいないときは素を出すのか」 「うん、別にいいだろ?」 「いいけど」だいぶ痛みはましになってきたので私は帰る準備をして、花穂と一緒に駅まで歩いていった。
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!