第一章

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今年から同じクラスになった佐野 悠太は、1年の頃から公式戦にもちょこちょこ使われている。 女子の中ではノッポでもうすぐ170cmに達してしまいそうな自分とは、ほんの2、3センチしか違わないように見える。 つまりは171~172cmくらいだと推測される彼は、西中男子バスケ部の中ではそれほど背の高い選手ではなかった。 だが、彼の動き―――スピードとジャンプ力は、高さのハンデを補って余りある。 高身長を活かしきれずに常にベンチを温めている自分とは、大違いだ。 ―――うらやまし。 ゴール下の体格の良い選手たちが、激しく身体をぶつけあってリバウンドを取るためのポジション争いをする。 そんな中、良いタイミングで悠太がひょいと後ろから跳んできてボールをさらった。 「ナイスリバン」 オフィシャル席にいる以上は、同じ学校とは言え片方のチームに肩入れして応援することはできない。 そのことをわきまえている紗耶香は、誰にも聞こえないように小声で彼を誉めた。
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