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コートを見下ろせる体育館のギャラリーが、控室代わりとされている。
2階へと続く階段を上り、荷物の置いてある場所へ―――
「え!?もう食べてるの!?」
先頭を進んでいた友達が声をあげて、何事かと前を覗き込んだ。
見ると、さっきまでコートを走り回っていた悠太が、汗も引かないままに弁当を広げてかきこんでいる。
「はっはとふっへふあうひん・・・」
「取りあえず飲み込め!」
口に詰め込んだまま喋ろうとする悠太に、隣で同様に昼食を食べていた純也が後頭部をはたきながら突っ込みを入れた。
ごくんっと大きく喉を鳴らして口の中のものを飲み込んだ悠太は、非難がましく純也を睨みつける。
純也はしれっとおにぎりにかぶりついた。
「・・・さっさと食って、次の相手をスカウティングだ」
女子部員に笑われたからかぶすっとした様子で、悠太はそれだけ言うとまた弁当をかきこみ始めた。
「ちょっ・・・、少し、ゆっくり、ちゃんと噛んでね」
あまりにも心配になってしまい、つい、そんな言葉が口をついて出る。
言ってしまってから、大して仲良くもないのに余計なことを、と紗耶香は少しだけ後悔した。
悠太は箸を持ったままの右手をあげ、「はんふうー」と―――
今のは、「サンキュー」かな。
そう考えると、ふっと笑いが込み上げた。
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