第一章

16/17
前へ
/133ページ
次へ
―――可愛い、か。 彼女はそっちかな、と考えてみるが、どう見ても年上で自分より大人な彼女に対して、その言葉はやはりそぐわない気がする。 【キレイなお姉さん】 うん、そうだ。 そう言う表現がぴったりだ。 と、悠太は内心満悦して頷いた。 コンビニが見えてきても、どうせもういないだろうという考えのほうが強くて、悠太はすっかり油断していた。 期待もなければ心構えもなく。 それは言い方を変えると、【彼女】と【コンビニ】を全く切り離して考えていたからかもしれなかった。 自動ドアが開くと同時に『ピロピロン』と電子音が流れ、レジからは機械的に「いらっしゃいませ」の声が聞こえる――― 普段どおりの、よくあるコンビニの音。 の、はずだった。 実際には、店員の「いらっしゃいませ」は中途半端なところで途切れ、最後に小さく「あ」と付け足された。 ―――なんだ? 不審に思って顔を上げる。 そこに、彼女が、いた。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加