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「何か良いことでもあった?」 「なんで?」 更衣室で椿に挨拶する前に聞かれた。 「特にないよ」 お互いに着替えながら会話が進む。 こういう時、ロッカーが近いと便利。 「何かあったでしょう? 今日顔色いいもん」 「いつもは悪いって?」 「いいから答えなさいよ」 そう言われても、本当に椿が考えているようなことはなかったんだけど。 椿が期待の目を向けてくるから、仕方なくあったことをそのまま話すことにした。 「コンビニに行ったら、タダで夕飯をゲットできた」 「……それだけ?」 「うん」 もらったと言っても、知らない人からだったということと。 「……ちょっと、可愛かったかも」 「なんか言った?」 椿は着替え終わり、髪を手直ししていた。 どうやら、聞こえなかったみたい。 「なんでもない」 思い出すと、いつもと違って小さな笑みが浮かぶ。 最近は憂鬱でしかない仕事。 朝から笑っている自分が不思議だ。 あの数分の出来事は、荒んだ私には癒し効果になったらしい。
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