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「どーせ飯も食わずに仕事してたんだろ。付き合うよ」
「じゃあ、ひとりでいても大丈夫なお店教えて」
嵐なら色んなお店知ってると思うから、多少ハードルは上げといた。
「いいよ。んじゃ、ちょっと待ってて」
小走りで去った背中を見て、出来た後輩だなとしみじみ感じた。
「瑛」
この会社で名前を呼ぶのは椿と嵐。
そして、元カレになった人。
「……馴れ馴れしく呼ばないでくれません?」
振り向かなくても誰か分かる。
「話を」
「あなたが幸せになる経緯なんて知りたくもないんですよ」
「……瑛」
早く。
早くここから離れないと。
「お疲れ様です」
嵐を待ってられず一歩踏み出す。
「あき」
「瑛ちゃーん! お待たせ!」
走ってきたわりに息を乱せず、私の腕をとった。
彼がいるのも分かっていただろうに、今気づきましたって顔をした。
「お疲れ様です、伊藤さん。帰ったんじゃなかったんですか?」
「……ちょっとな」
「俺たち飯食いに行くんでこれで失礼しますね」
「ら、嵐」
必要以上に近い距離。
お互いに名前を呼んで。
遅めの夕飯。
誤解を生みそうなのが揃ってる。
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