† 2 †

4/12
前へ
/101ページ
次へ
「どーせ飯も食わずに仕事してたんだろ。付き合うよ」 「じゃあ、ひとりでいても大丈夫なお店教えて」 嵐なら色んなお店知ってると思うから、多少ハードルは上げといた。 「いいよ。んじゃ、ちょっと待ってて」 小走りで去った背中を見て、出来た後輩だなとしみじみ感じた。 「瑛」 この会社で名前を呼ぶのは椿と嵐。 そして、元カレになった人。 「……馴れ馴れしく呼ばないでくれません?」 振り向かなくても誰か分かる。 「話を」 「あなたが幸せになる経緯なんて知りたくもないんですよ」 「……瑛」 早く。 早くここから離れないと。 「お疲れ様です」 嵐を待ってられず一歩踏み出す。 「あき」 「瑛ちゃーん! お待たせ!」 走ってきたわりに息を乱せず、私の腕をとった。 彼がいるのも分かっていただろうに、今気づきましたって顔をした。 「お疲れ様です、伊藤さん。帰ったんじゃなかったんですか?」 「……ちょっとな」 「俺たち飯食いに行くんでこれで失礼しますね」 「ら、嵐」 必要以上に近い距離。 お互いに名前を呼んで。 遅めの夕飯。 誤解を生みそうなのが揃ってる。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

179人が本棚に入れています
本棚に追加