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「仕事で使うの」
「……本当に?」
昔の嵐も知ってるから、つい疑ってしまう。
「ちょっとした打ち合わせの時とかに使ってますよ、本当に」
男性は笑いを堪えて教えてくれた。
「はじめまして、かな。ここのマスターの沖村です」
「はじめまして。葛城瑛です」
「嵐の友達?」
「大学の先輩後輩です」
「仲良いんだね」
「残念ながら職場も同じなので」
「残念って酷くない? 部署は違うじゃん」
部署まで同じだったら会社辞めてるな。
「ゆっくりしていって。手があいたらまた来るから」
マスターと入れ違いで食事が運ばれてきた。
「ダイエットしてんの?」
「してないよ?」
「そんな量で足りんの?」
時間帯を考えて少なめにヘルシーなものを頼んだ。
「最近はこれぐらいは普通。夜はあんまり食べないの」
嵐はあり得ないって顔して、ビールを飲んだ。
「ちゃんと食べないとダメだよ。瑛ちゃんただでさえ細いんだから」
「食べてるよ。心配しないで」
いつもなら私が言いそうなセリフを嵐に言われるとは。
「本当に大丈夫だから」
小さく笑みを浮かべた私に嵐は仕方なさそうに肩をすくめた。
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