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「黒川さん」 彼は私のふたつ下。 社内だから呼ぶなと前に言ったはず。 「はいはい。葛城さん」 「書類持ってきたんで後で確認してください」 「りょーかい」 軽く頭を下げてから、エレベーターに向かおうとした。 「気にしなくていいよ。ただの戯れ言だから」 足を止めた私は、振り返らずに呟いた。 「……別に、気にしてない」 「瑛ちゃんがいいならいいよ」 「あんたは相変わらず生意気ね、嵐(らん)」 「あれ、会社なのに珍しい」 「あんたといると、背伸びするのが馬鹿馬鹿しくなるのよ」 実は大学の先輩と後輩。 ここで再会するとは思わなかった。 「瑛ちゃんのそーいうとこ良いよね」 「……はいはい。私戻るわ」 「うん。また飲みに行こうよ。泉も誘ってさ」 「遠慮する。泉とふたりのほうがいいし」 泉はひとつ下の後輩。 波長があって、学生から今に至るまで連絡は取り合っている。 「俺の泉なのに」 このふたりも最近、再会したらしい。 関係は友達以上恋人未満って聞いたんだけど。
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