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どうせ、結婚の準備やら挨拶回りで私にまで手が回らないんだろ。 昔からそうだった。 「瑛はホント」 「なに?」 椿が言いかけて、首をふった。 「なんでもない。デザートはどうする?」 彼女の気遣いにはいつも助けられる。 メニューに目を通して椿に渡した。 「すみません」 店員がきて、私たちは同時に言った。 「チーズケーキセット」 「はい、おふたつでよろしいですか?」 ふたりして頷く。 店員は笑顔で戻っていった。 「そう言えば、みゆきが黒川さんに玉砕したって聞いた」 「告白したんだ。あいつ好きな人がいるからっていつも断ってんのに」 普段から愛想笑いは当たり前のようなやつでも、言い寄られてはそう言っているらしい。 「だって、彼女じゃないもんね。付け入る隙があるならってやつじゃない?」 「ムダな努力ね」 「実は、そう言ってるだけでいないんじゃないかとか」 女のウワサは怖いからな。 「年上好きで、葛城瑛に貢いでる」 「はぁ!?」 「ウワサよ。ウワサ」 面白そうに笑ってる椿に腹立つ。
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