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「黒川さんってあんたになついてるじゃない?」 「……それは、大学の」 「分かってる。でも、周りは知らないわけ。おまけにあのバカはあんなことになって、そのウワサに尾ひれが付いちゃったのよ」 要するに、嵐は密かに私に想いを寄せていて、元カレに捨てられた私は嵐と…… 「下らない妄想するなって言いたいわね」 嵐と恋人なんて考えただけで気持ち悪い。 「瑛も立ち止まらないんだよ。来年は私たちも28なんだから」 椿だって彼氏いないくせに全然焦ってないなぁ。 私と違っていつでもできそうではあるけど。 「しばらくはいい、と言いたいとこなのに、年齢は止まってくれないからな」 ため息が知らずに漏れる。 「あら、出会いならこの先たくさん作れるじゃん。今フリーなんだから」 フリーという単語に少しだけ違和感だ。 お互いに忙しくて顔を合わせない日々はあったし、毎日連絡をとっていたわけでもない。 なのに、いつの間にかあの人は私の元カレになった。 この一ヶ月の間に、私たちの関係を知っている友達に散々引っ張られた。 おかげさまでタダ酒をたらふく飲めたのは感謝している。
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