『文字があって良かった』―家族編―

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  俺の姿をみた有生は嬉しそうに抱きついてきた。   「もう、13だろ?いい加減抱きつくのは卒業するべきじゃねーか?」 有生はそんな俺の言葉を無視してスケッチブックを見せてきた。 普通の奴ならきっと怒るだろう。 人のこと無視して更には自分の主張を言い出した。と。 でも俺は怒らない。 その理由を知ってるから……。 ”おかえり、お兄ちゃん” スケッチブックにはそう書かれていた。 有生は3歳の頃、高熱を出してしまったため耳が聴こえない。 先ほどの言葉も無視したのではなく聴こえてないからした行動で悪気があってしたのではない。 むしろ有生は耳が悪くないなら「そうだよね、ごめん」と言ってすぐ離れてくれる。  
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