『文字があって良かった』―家族編―

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  ”お兄ちゃん、ぼくがスケッチブックを見せる前何か言ってた?” いつの間にか先ほどの言葉の下に真新しい字が書かれていたスケッチブック。 有生が右手で鉛筆を持っている姿。 ……たった今書かれたものなのだろう。 俺は有生の頭を撫でながら胸ポケットからボールペンを出し、スケッチブックを借りた。 ”グチを言ってただけだよ” 有生の質問の言葉の下に書いた。 それより上は全て鉛筆なので、ボールペンでかつ、大人の字で書かれたその一言はとても目立った。 俺はスケッチブックを有生に返す。 スケッチブックはすぐこちらに来た。 ”そっかぁ、仕事大変だもんね。じゃ、こんな所で長居もなんだし早くお部屋いこう” という内容をたくされて。 俺はいつも通り有生の手をひいて一緒にリビングへ向かった。  
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