『文字があって良かった』―家族編―

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  これが俺の日課。 あれ、両親は? と思った人もいるだろう。 俺たちの親はもういない。 4年前に旅行先の飛行機でテロ事件が起こり、巻き込まれて……。 有生に抱きつくのはやめないといけないと言うのをためらうのも、親がなくなったとき俺が兄、母、父の家族の役割全て引き受けるからと約束したから。 おまけに親が生きている頃も共働きで子どもの面倒を見ることが少なかった。 有生の耳が聴こえなくなり、色んな手術を試そうとしていたから高い手術費が必要で。 結果、無くなるのは金だけで有生の耳は聴こえないままだったが。 旅行を夫婦の二人だけにしたのは両親が苦労して疲れた体と心を癒してきてほしいなと思ってた。 それなのに……親は死んだ。 有生に愛されることもなく。 忙しくて両親は4歳以降有生を抱きしめなかった。 だから有生は自分のためだったとはいえ、自分を抱きしめなかった親があまり好きじゃない。  
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