2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんた引っ張って切れるとでも思ってるの?そんなに簡単にいくわけないじゃん!」
呆れた私がため息混じりに文句を言うと、後ろの彼の動きが止まった。
え?なによ。
「お前さぁ」
そこまで聞こえるとふわりと空気が動いた。
「前も言ったけど.....男なめすぎ」
「ぅえ?!」
首筋に微かに風を感じたと思ったら、急に耳元で声がしたから思わず肩が跳ねてしまった。
「.....なっ........なに...して!」
耳元で囁かれた声がなんとなく生めかしくて、心臓がドキドキしちゃってるんですけど!
「少し反動くるかもしんねぇけど、少しの間動かないでいろよ」
「......は?」
なんて反論するけど私の頭はパニック状態なんだから、動けるわけもなく固まったまま、彼の動きを待つしかない。
ぷちっという音と少しの引っ張られた感があった後も相変わらず動けないままの私。
視界の端に私の方を見る黒田の姿が見えるけど気にしてられない。
今は自分のことを対処しなくちゃ。
「んだよ...急に動かなくなったと思ったら顔真っ赤になってんじゃん。もしかしてさっきのでドキドキしちゃった?」
ぎくっ。
そんなに私ってわかりやすいのか。
「.....えっと..その」
どうしよう。頭がうまく回らなくて返事できない。
それでもなにか言わなきゃって思うけど、意味のある言葉なんて思いつきやしない。
こんな状況初めてなんだよ!ましてや2人で出かけるのだってこれが初めてなのに!
後ろから彼に囁かれた時の対処法なんてネットに無かったし、どうしたらいいの。
「あのさ、いつまでそうしているつもり?」
え?いつまで?
そんなの私がききたいよ!
「......はぁ」
頭上で溜め息がしたと思ったら、私をこんな状態にした張本人はすたすたと歩いていってしまう。
え?置いていっちゃうの!?
嘘でしょう!
多分待ってと言ったって止まってくれるわけ無いだろう。
「絶対、負けないんだから!」
このむかつきを原動力にして、私は1人で歩いっていった男の背中を追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!