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読んでいると車が止まり声が掛かった。
「美幸ちゃん」
「恵子さん」
車から降りてきた恵子は、大きなお腹だった。
「遅くなってごめんなさい。夏に向かって忙しくて」
「ううん、こっちこそ。無理やり押し掛けちゃって」
「里帰り出産も考えたけど、ここらの農家は夏が忙しいの。秀雄さんもそうだから子供に会いに来れないでしょ」
愛おしそうにお腹を触る恵子に美幸は軽い嫉妬を覚えたが、その気持ちを押し込めて言った。
「恵子さんが農家に嫁ぐなんて驚いたわ」
「私もよ。まさか故郷を離れてこんな遠くに来るなんて」
結婚前に会ったきりだったが、恵子の笑顔は昔のままだった。
恵子の結婚式は、仕事の都合がつかず出席出来なかったので、夫の秀雄には直接会った事は無かった。
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